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2021年4月、テキサス州上院の委員会の前に座ったカイ・シャプリーは、恐れていなかった。ふんわりした黄色のブラウスと花柄のスカート、そしてカウボーイブーツを履いた当時小学4年生の彼女は、落ち着いて自己紹介をした。
"私はバレエと数学と科学と地質学が大好きです。自由な時間は猫やニワトリと過ごし、友達とFaceTimeして、いつかドリー・パートンに会える日を夢見ています」と証言した。"大人に良い選択を求める為に私の自由時間を使うのは好きではありません。"
シャプリーは、医師が自分のようなトランスジェンダーの子供たちにトランス治療を提供することを禁止する上院法案1311と1646に反対票を投じるよう、議員たちに促した。そのうちのひとつは、この治療を「児童虐待」とまで定義している。(両法案とも最終的には否決された)。
「私の様なトランスジェンダーの子どもを利用して、私が存在するというだけで私を憎む人達から票を集める政治家がいることが悲しくなります」と彼女は続けた。「神様が私を作ってくださった。神様は私を愛してくれています。そして、神は間違いを犯さない。」
冷静さの裏に、激しい怒りを感じたとシャプリーは言う。議員たちは彼女の視線を避け、時計を見たり、携帯電話をスクロールしたり、書類に落書きをしたりしていたと彼女はTIME誌に語った。彼女に質問する機会が訪れても、誰も質問しなかった。
「本当に?私のことをもっと知りたいと思う人はいないの?」
シャプリーの証言の動画はすぐに拡散された。彼女が注目されるのは、これが初めてではない。現在5年生の彼女は、何年もの間、公に自分の話をし、トランスの平等を訴え続けてきた。母親と一緒に全米を回り、LGBTQの権利を求める集会でスピーチをしてきた。また、ACLUと協力して、トランスの権利に関するプロジェクトに取り組んできた。また、国の議員に会い、性的指向や性同一性に基づく差別を違法とする「平等法」の成立を促したこともある。しかし、彼女自身が証言するのは4月が初めてだった。理由は簡単だ。「これまで人々が”トランスジェンダーの子ども達について”広めてきた嘘はどれも真実ではないことを示したかったのです」と彼女は言った。
カイは自然の活力です。わずか11歳のトランス権利活動家は、ネット上で支持を集め、子供も大人も彼女に触発されてカミングアウトしたと書き込んでいる。「私を頼りにしている人がたくさんいると思うと、頑張ろうと思えます」とシャプリーは言った。そしてアメリカの州議会ではトランスの子どもを対象とした法案がかつてないほど増えており、擁護団体Human Rights Campaignによると、2021年だけで130以上の反トランス法案が提出された。彼女は止めるつもりはないらしい。
「アクティビズム(活動)が私にとって重要なのは、私達はこの社会に属していることを示す方法だからです」とシャプリーは言う。「正しいことの為に闘うことを示す方法なのです。私たちは黙りません。」
初めてカイの母親が自分のためにテキサス州議会で証言するのを見たとき、シャプリーはまだ5歳だった。母親はカイの様なトランスジェンダーの子ども達が、自分のジェンダーアイデンティティに合ったトイレを使えない様にする法案に反対を表明していたのです。その後数年間、さらに多くの反トランス法案が現れると、シャプリー夫妻は何度も何度も足を運んだ。その日々は長くなることもあった。カイとその兄弟は、廊下のベンチや議場の床で眠ることもあった。「彼女はテキサス州議会議事堂で育ったのよ」と母親のキンバリーは言う。
シャプリーさんはこう言う。「私は自分の輝いている顔を知っているように、議事堂をよく知っています」と、彼女はにっこり笑う。
カイが母親なしで公の場で話し始めたいと思ったのは、2020年秋、シャップリーの師となった著名なトランスジェンダー・ジャーナリストで擁護者のモニカ・ロバーツの葬儀の前だった。"お母さんは、「一緒に立とう」って言ってくれたんです。でも私は、『もう自分で話せるくらい強くなったと思う』と言ったんです」と語る。シャプリーは、最終的にロバーツの人生や受け継いだものについて数分間話した。2021年の春には、議員たちの前で証言したいと思うようになっていた。
母親のキンバリー・シャプリーは、「カイは、どの様な場でも物怖じせず話すことができるので、"その”要素を持っていると言われます」と笑う。「疲れて眠るまで、105%、ありのままの彼女なんです」。
しかし、シャプリーの時間の全てを活動に費やしている訳ではない。7人兄弟の6番目で、2人しかいない女の子のうちの1人であるカイは学校に行くことと、彼女が「ビューティチーム」と呼ぶ友人たちと戦略ゲームをすることが大好きだ。ドリー・パートンを崇拝しており、「なぜ好きなのか」と聞かれると、不満げな顔をして驚いた。
「好きだからに決まってるでしょう!」と答える。「彼女は素敵です。素敵だし、気品がある。彼女は素晴らしい。彼女の髪。ファッションも!」。
シャプリーは、大人になったら "全て "になりたいと話す。「103匹の猫の母親。女優。映画監督。作家。科学者。バレリーナ ミュージシャン。" 演技することが好きで、Netflixの2020年の番組「The Baby-Sitters Club」のエピソードに出演したこともある。"今度はブロードウェイに出たい "と目を輝かせた。
シャプリーさんの家族は前の学校から女子トイレの使用を拒否されたため、2018年にテキサス州ピアランドからオースティンに引っ越した。彼女は新しい街を気に入っている。それでも、彼女の母親は州がトランスの子ども達にとって危険な環境になることを心配していると言う。そして、テキサス州の議員たちが、昨年の立法セッションでトランスの子ども達を直接ターゲットにした少なくとも13の法案を提出した後、家族はもうこれ以上闘うことは無駄であると判断し、シャプリー一家が生涯を過ごした唯一の場所であるテキサス州から引っ越すことを決意した。
「トランスジェンダーの家族が経験していることの全体像が人々に理解されているとは思いません」とキンバリーは言う。「安全ではありません」シャプリーの活動が注目されたことで、ネット上の不要な憎悪も彼らの家族に向けられ殺害予告も受けた。
しかし、一家にはある言葉がある。心配するのはママの仕事。カイの仕事は自分の話をすること。彼女はそれを伝え続けるつもりだ。シャプリーさんは、今後も反トランス法案に反対する証言をする予定であり、必要であれば「いつでも」証言する用意があるという。自分の声を出せない人達の為に立ち上がる」責任を感じているのだ。
「正しいことをするのが私の性分です」と彼女は付け加えた。「そして、多くのドラマに巻き込まれるのも私の性分なのです」。