「ママ、女の子として生まれ変わってくる為に、ママのお腹に戻らないと」

 

トランスジェンダーの娘を育てる私のストーリー

 

by Ali Pantony and Lucy Morgan 雑誌 Glamour掲載 2021年11月

 'Mama, I need to go back in your tummy, so I can come out again as a girl': My story of raising a transgender daughter

「ママ、女の子として生まれ変わってくる為に、ママのお腹に戻らないと」

 トランスジェンダーの娘を育てる私のストーリー

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子供が生まれた時、男の子だと言われました。

しかし、私の子どもは決して典型的な男の子のようには振る舞いませんでした。歩いて話せるようになるとすぐに、バレエのレッスンやプリンセス、妖精の女王など、女の子の世界が自分の居場所だと私に教えてくれたのです。3歳になると、私が娘のことを男の子と呼ぶと訂正するようになりました。

私はあまり深刻に受け止めなかったのですが、1年ほど経って、娘は私の目を見てママのお腹に戻してと言ったのです。「ママ、私は女の子として生まれ変わってくる為にママのお腹に戻らないと。何か悪いことが起きて男の子として生まれて来ちゃったから。」と言ってきたのを覚えています。その瞬間、これは本当に大変なことなのだと思いました。娘は自分自身について何か深い真実を語っているのだと思ったのです。

「大丈夫。」少なくとも、私はそう声に出して言ったのです。実際、どうすればそれを実現できるのか私には見当もつきませんでした。私の知る限り、「息子」が求めていること、つまり女の子になることは不可能だったのです。

当時、メディアにはトランスジェンダーの子どもは出ていないようでした。実際、私が知っているトランスジェンダーの例は、映画やテレビ番組でセンセーショナル、或いは不気味に描かれたものだけで、トランスジェンダーのキャラクター(通常はトランスジェンダー女性)はサイコパスかギャグのオチのどちらかに位置づけられていました。多くの場合、トランスジェンダーの登場人物は死んでしまうのです。

私は、ジャズ・ジェニングスやジャネット・モック、ラバーン・コックスのように、我が子がトランスジェンダーとして素晴らしい人生を歩むことができることに気づきました。そして、自分とよく似た子どもを持つ親たちの支援団体に出会いました。私は娘を応援するために一歩を踏み出し、娘は4歳から女の子として暮らし始めました。それは約10年前のことで、私たちは決して過去を振り返ることはありません。

当初、娘の新しい代名詞に慣れるのは大変なことでした。私は何度も間違え、男性の代名詞を使いました。しばらくすると、私の脳は新しい代名詞と、彼女が選んだ新しい名前に切り替わりました。当初私の家族は懐疑的でした。一過性で時が経てば治るものだと思ったからです。でも、彼女が女の子として幸せそうにしているのを見ているうちに、それが当たり前となっていったのです。今では私たちの誰もが彼女が女の子でないことを想像することはできません。

先生たちはとても協力的でしたが、私たちは学校ではトランスジェンダーであることを伏せておくことにしました。最初は学校の他の親や子どもたちにも黙っていました。そして、彼女が親しい友人に話すことにした時、ほとんど全ての人が非常に協力的でした。彼女が大きくなった今、この情報を秘密にしておくことは容易ではありませんが、ほとんどの人が彼女のプライバシーを尊重してくれています。実際、彼女の友人たちは彼女がトランスであることを特に気にしておらず、寧ろ友人と楽しく過ごすことを気にしています。

13歳の誕生日の少し前から娘は安全で可逆性のある「二次性徴抑制剤」を服用し始めました。欧米中の医学界で広く支持され定評のある治療で、トランスジェンダーの子どもたちが思春期を迎えた時点で二次性徴抑制剤を投与します。これによって「時間を稼ぎ」、思春期を一時停止させ、子どもにとって非常に苦痛な(そして多くの場合不可逆的な)体の変化を防ぐことができるのです。

次のステップは娘がエストロゲンホルモンを服用し、少女から女性へと成長できるようにすることです。物心ついた時から女の子として生きてきた娘にとって、男性になるために成長しなければならないというのは考えられないことなのです。

人々は、希望する子供の誰にでも医師が二次性徴抑制剤やホルモン剤の処方や、手術までも行っていると考えている様です。そんなことは絶対にありません。実際、若い人たちがこうした医療介入を受けることは非常に困難です。イギリスでトランスジェンダーの子どもを持つ私の友人によれば、医師の診察を受けるだけでも2年待ちということがよくあるそうです。もしあなたの娘が13歳でひげが生えてきていることが原因で自殺を考えていたならば、助けを求める為に2年も待てというのでしょうか?

悲惨なのは、こうした子どもたちが必要不可欠で命を救う医療を拒否されている為に、驚くほどの数の自傷行為が行われているという事実です。正直なところ、私の娘が二次性徴を無傷で乗り切れるとは思えません。精神的にも、肉体的にも。それが出来る13歳の少女なんているでしょうか?

私たちは、「もう耐えられない。この思春期を生き抜くことはできない。この体では生きられない。」と言っている子供たちの声に耳を傾けなければなりません。

トランスジェンダーの 子育ては他の子どもと殆ど同じです。 彼らの話を聞いて、彼らのあるがままを尊重し、 無条件に愛します。 彼らが傷つくような法律が作られたり、意地悪で無礼なことをされたら、子どものために立ち上がり、反撃するのです。私は娘の権利のために、子を愛する親ならば誰もがする様に何があっても闘います。

親御さんへのアドバイスですか? ただ耳を傾けることです。子どものことを真剣に受け止めましょう。もしこれが一過性のものであれば、それは過ぎ去るでしょうし、もし一過性でないなら、辛い時期(どんな親にも辛い時期はあります)を子供と一緒に歩んでいくことです。最終的には、子どものセクシュアリティやジェンダーアイデンティティがどうであれ、振り返って、「時にはどうしたらいいかわからないこともあったが、私は子供に寄り添っていた。私は子供を応援し、子供は常に自分の話を聞いてもらい愛されていると感じていた。」と、そう言えるでしょう。

私の娘ーそしてトランスジェンダーであるかどうかにかかわらず、全ての子どもたちに願うことは、彼らが家族やコミュニティの愛情に支えられながら、ありのままに生きる機会を持てるようになることなのです。