トランスジェンダーの児童生徒と同じトイレを使用することに他の児童生徒が不安を感じることは、一件もっともらしい懸念に思えるかもしれないが、これは、トランスジェンダーの男子は「本当の」男子ではない、トランスジェンダーの女子は「本当の」女子ではない、或いは、トランスジェンダーの児童生徒が不適切な目的でトイレを利用したいという誤った考えに基づいていることがよくある。学校は、他の児童生徒の不快感の原因となり得る誤解について対処するよう努めるべきである。他の児童生徒を不快にさせる行動は全ての児童生徒の安全を確保するという学校の取り組みに違反するもので容認しないということを認識させ、トランスジェンダーの児童生徒の存在自体が不適切な行為を生じるのではないということを明確に認識させることが重要である。トランスジェンダーの児童生徒と施設を共有することを不快と感じる生徒は、保健室のトイレのような別施設を使用することを許可されるべきだが、他の児童生徒の不快感の為にとトランスジェンダーの児童生徒に代替施設の使用を強制することは、決してあってはならない。
トランスジェンダーの児童生徒の尊重が出発点であるべきである。不快を感じることと危険を感じることは同じではないということ、学校関係者には全ての生徒の安全を確保する責任があるといった重要な概念は、トランスジェンダーの児童生徒が適切なトイレや更衣室を利用することについて発生する「もしもの場合」に適用できる。トランスジェンダーに非常に協力的な校風であっても、トランスジェンダーの児童生徒の中には、トイレや更衣室を使用することに不安を感じる場合がある。学校は安全で安心できることを保証すると同時に、児童生徒が自分のアイデンティティを肯定できるような代替手段を提示し、児童生徒が十分な情報を得た上で選択できるように、全ての可能な選択肢について話し合うことが重要である。ただしトランスジェンダーの児童生徒に、個別の施設を利用することを決して強制すべきではない。
宿泊を伴う研修旅行は、教育的な取り組みであると同時に、社会的な関わりを持つ重要な機会でもある。トランスジェンダーの児童生徒がそのどちらも体験できるように、部屋の割り当て、付き添い、入浴などについて、ある程度の計画を立てる必要がある。このような場合に一般的に生じる懸念は、学校がすべての児童生徒に対して考慮すべき問題である。学校は、互いのプライバシーと境界線を尊重することについての決まりを明示する義務がある。児童生徒が性別によって分けられるのであれば、トランスジェンダーの生徒は、自分のジェンダーアイデンティティと合った仲間と同室になることを許可されるべきである。トランスジェンダーの児童生徒が安心できる友人と一緒になるようにするべきである。場合によっては、トランスジェンダーの児童生徒がルームメイトの少ない部屋を希望したり、本人やその家族が別室を希望することもある。学校は可能な限りこのような要望を尊重し、そのような代替案によって児童生徒が疎外されることがないように調整すべきである。ルームメイトが児童生徒がトランスジェンダーであることを知っているかどうかにかかわらず、学校には児童生徒のプライバシーを守る義務があり、生徒がトランスジェンダーであることを他の生徒やその保護者に開示したり、開示を求めたりすることはできない。
入浴施設が共同である場合、学校は、宿泊施設に個室の入浴設備があるかどうかを調べる。入浴中にプライバシーを確保したい生徒が多数いることを認識し、学校はそのような生徒が一人ずつ入浴できる施設を利用できるようなスケジュールを立てることを検討すべきである。宿泊を伴う学習体験の大部分は社交的なものである。夜遅くまで友達と語り合ったり、長時間バスに乗ったり、長い時間を共に過ごす。そのような場で児童生徒間で悪ふざけや虐めが起きる可能性もあるが、そのような行為はトランスジェンダーの児童生徒がいることにより起きるものではなく、学校はどのような場合でも対処できるように準備する必要がある。